2020年2月16日日曜日

新型コロナウイルスへの日台における対応の差


台湾のニュースを観ていると、日本人自身より台湾人のほうがよほど日本のことを心配しているように思えます(写真は、日本で感染したタクシー運転手の足取りについての台湾のニュース)。
とにかく情報の細かさや変化へのスピード感があります。現在日本の地上波で、ここまで新型コロナウイルスへ関心をもって常時報道しているメディアはみられないのではと思いますし、日本国内でも「もうすぐ暖かくなる、大騒ぎするような事ではない」といった空気があるように見受けられます。
そうした楽観は台湾の方々の不安をかきたて、この春の(台湾の方々がもっとも愛する)桜のシーズンに向けて3月は日本へのツアーの50%がキャンセル、また4月も予約が埋まらない状況だそうです。

2003年に猛威を振るったSARSのために70人以上の人命を失った苦い経験のある台湾では、新型コロナウイルスのニュースが伝えられた早期から、考え得る限りの対応が行われてきました。
中国・香港・マカオからの渡航禁止、すべての公立学校の春休みの二週間の延長など、かなり踏みこんだ対策もありますが、中でも最も効果をあげていると思われるのは、早急に「中央流行疫情指揮中心」という移民署,衛生署,交通部などの行政部署を越えた超組織的センターが作られたことです。ここでは、あらゆる予防対策を検討・共有しながら毎日定時に記者会見を行い随時最新の情報を公開して「チーム台湾」で新型コロナウイルスに立ち向かっていく姿を見せ、台湾国民に安心を与えることで、台湾国民側もより政府を信頼し、パニックにならず正確な情報を読み取って「正しく気を付ける」態度を保つという好循環が生まれています。

コロナウイルスへの日台の対応の違いは、それぞれの政治がどこを見ているかという話に尽きると思います。日本は五輪(含め国際的な体裁)を見ているんだけれど、台湾は明らかに「国民」を見てるという感じがします。

台湾の政治が国民を見ているというのは、蔡英文総統が先日の選挙で続投を決めた際のスピーチでも明確に表れていて、それを見事にその後のコロナウイルスへの対応で示した蔡政権の現在の支持率は54%、防疫対応満足度は83%と、政府への高い信頼感となって表れています。
https://news.tvbs.com.tw/politics/1276061
自分の選んだ政府がさっそく高いパフォーマンスを発揮してくれていることへの選挙民としての満足感。そして前回の選挙で野党国民党自体の得票率も決して低くはなかったことへの、現政府の緊張感。こうしたポジティブな連鎖が、台湾の「民主主義が生きてる感じ」に繋がるのだろうなあと今回の件で改めて思います。

台湾から見て、日本のことがとても心配です。
楽観の反動からパンデミックによるパニックが起きないように、行政の部署を越えて一元的な対策本部をつくり、常時新しい情報を共有・公開するという台湾が早期にとった対策は、まずは日本政府に一番に希望したいことです(昨日ようやく専門家会議が作られたと聞きました)
政府の対応が遅い以上は、個人やそれぞれの会社などできちんとリスクを認識して回避していくしかないようです。こちらは、感染症の臨床の専門家の方のページです。
SARSや前回の新型インフルとは違って、発症初期が軽症で7日目ごろから重症化する今回の新型コロナウイルスは、日本のような社会でこそ広がりやすいかもしれないという事と、それへどう対応するかが書かれており参考になります。

「COVIDと対峙するために日本社会が変わるべきこと
https://georgebest1969.typepad.jp/blog/2020/02/covidと対峙するために日本社会が変わるべきこと.html?fbclid=IwAR3PjVqO400Daqn-Acuajbs7TJnSFxmdL90JNL-H6CwV0BA1hY_9pkxXhiE

ポイントは
1.風邪をひいたり体調を崩したら家で休む。社会もそれを許容する。
2.しんどくなったらマスクを付けて速やかに病院を受診する。しんどくなければ必須ではない。しんどさの基準は個人差があるので個々の判断で。
3.自宅に家族がいれば、病気の人はマスクを付けて、神経質に何かに触るたびに手指消毒をする。何度でも。
4.仕事や学業を効率化する。人が集まらねばならない会議は最小化してメールでできること(特に連絡事項)はすべてメールやチャットなどでやる。自宅でできる仕事も自宅でやる。
5.医療リソースと公衆衛生リソース(役所含む)を大切にする。モノと人。マスクを無駄遣いしない。人も無駄遣いしない。すぐに病院に駆け込まない。「何かあったらすぐ病院に」と勧めない。夜中の記者会見など無駄なことはしない。というか、記者会見もチャットでやるといい、昼間に。

最後に、日本から台湾へと旅行される皆さまへ。
台湾では、皆さん日々ニュースで日本の状況を注視しており、日本へ旅行して感染することや、日本からウイルスが持ち込まれることに対してかなり敏感になっています。
エチケットとして、台湾へご旅行の際にはマスクの着用をお願いできればと思います。

2020年2月12日水曜日

【台湾Y字路が超級可愛な映画に!!!/youtubeで全編視聴できます】


台湾Y字路終於上日本短編電影了!!!
SHE IS SUMMER という日本の女性アーティストの新曲『嬉しくなっちゃって』という新曲で、台湾Y字路が登場しててビックリ!というエントリーを以前投稿したのですが、

https://www.youtube.com/watch?v=zYAguZw9D9o
その後、MVを監督をされた穐山 茉由監督よりご連絡をいただき、実はMVの続編的な短編映画が公開される!!!ということを伺って楽しみにしていました。
その短編映画が、ユーチューブで昨年末より公開。
台北Y字路で撮影されたMVを観た女の子がY字路を探す台北の旅にでるという、Y字路自体がメタフィクションの仕掛けになっているスゴイ作品。
台湾Y字路本で書いた「Y字路と記憶」「Y字路と辺界」「Y字路の重層性」「Y字路とは出会いの結果」というようなわたしがY字路へと重ねた想いが、みごとに台北の街を背景に魅力的な物語として描き出されていて、言葉にならないぐらいに感動しました。
穐山監督の長編作品『月極オトコトモダチ』はまだ観られていないのですが、ポスターにはかなり高低差のある街のロケーションが使われていて、スリバチやY字路など地形的な「場所の感覚」にとても意識的な方なのではないかなーと感じました。
「Y字路が好きって、変わってる」っていう劇中のセリフにも思わず爆笑、、、暗渠についても触れられているので、暗渠好きも必見です。しかも台湾発で日本で大ヒットした『幽玄同士』世代としても、かなりツボにはまりました。
ロケーションの数日が見事に偶然、「ザ・冬の台北」という感じのこの冬一番の寒さのしとしと雨降りのときで、撮影大変だろうな、、、と思っていたのですが、いざ完成された作品を観てみると、絶対にこの映画は太陽輝く青空の下の台北ではダメだったことがわかります。Y字路の下を流れる水の流れ(台湾の生活のすぐそばにある異界)と現実世界とを「水」=雨がつなぎ、陰影をもたらしています。主人公の浅川梨奈さんが同安街路地のなかで「雨に唄えば」を踊るシーンもめちゃくちゃキュート。
これ是非とも中文字幕をつけて頂き、台湾の方々にも観てほしい!!!
今回の企画は、サントリーのスポンサーで、インターネットでの映画公開を前提とした(台湾でいう微電影)新しい試みということで、偶然にも台湾Y字路本が監督の目に留まり、そこから物語が紡ぎ出されてこうして形になったということ、本当に面白いし「嬉しくなっちゃって」、見つけて下さって有難く思います。エンドロールにも拙著をクレジットしていただきとっても光栄です。本を書いてよかった。
以上、余りにも感動してゴチャゴチャと感想を書いてしまいましたが、そういうゴチャゴチャを考えずともすごく楽しめるポップでキュートな30分なので、是非とも通してご覧になってください!!!

2020年1月5日日曜日

限界突破


明けましておめでとうございます。
お年賀の絵は初の台湾人女性画家、陳進の『合奏』をモチーフに。
祝大家西歷新年快樂!把很喜歡的“陳進”的畫當做新年卡

昨年は二冊の著書『台湾と山口をつなぐ旅』と『時をかける台湾Y字路』が、わたしをいろんなところに連れて行ってくれ、いろんな方と出会わせてくれました。ご縁と共にたくさんの方に支えて頂いている事への感謝を噛みしめるような一年でした。皆さまありがとうございました。

今年は、一昨年より温めてきた新しい計画を形にすること、引き続き日常の中で感じた違和感や気づきを大切にすること、そして「そういうものだから」「こうあるべき」「わたしには無理」と自分を規定する事から、もっともっと自由になる年になればいいなと思っています。

ところで昨日の紅白ご覧になりましたか?
紅白の終盤、氷川きよしさん(最高!)→松田聖子さんと来て、最後MISIAさんのレインボーフラッグとドラァグクイーン祭に、ジェンダーギャップ121位の国の公営放送の、歴史あるジェンダーとセクシズムの象徴そのものみたいな番組が「国も年齢も性別も超えよう」という強烈なメッセージを発したことに、新しい年の訪れをビシバシと感じました。
賛否両論あるかとは思いますが、これまで沈黙してきた人たちが「きちんと言葉にして表現しよう」と決めた昨年の、最後に相応しい紅白だったと思ったし、とても力をもらいました。

わたしも、今年のテーマは
「限界突破」
で走りたいと思います。

2020年 1月1日 栖来ひかり

2019年12月23日月曜日

台北市南海路40巷

 1991年に公開されたエドワード・ヤン監督の映画「クーリンチェ少年殺人事件」。
1960年代に台北牯嶺街(クーリンチェ)で、じっさいに起こった殺人事件をモデルにしたものである。長らく権利関係などでDVD化もされず幻の作品と言われてきたが、今年になってデジタルリマスター版がようやく台湾、つづいて日本でも公開され、映画ファンのあいだで反響をよんでいる。
好きなシーンは沢山あるが、背の低い少年が椅子の上に立ってマイクをにぎりしめ、鳥がさえずるように唄うエルビス・プレスリーの「 Are You Lonesome Tonight 」を聴いたときは、再びスクリーンでこの映画に会えた嬉しさに胸がふるえた。英語タイトル「The Brighter Summer Day」は、このエルビスの曲中に登場する「The Brighter Sunny Day」という歌詞より着想を得たものという。光が明るいほどに影は濃くなるから、台湾の強烈な夏の光なら闇はなおさら深まる。戦後に中国より台湾に渡ってきた人々の暮らしを背景に、大人たちの抱える暗闇をかんじ取りながら成長する少年少女たちのヒリヒリするようにまばゆい青春の刹那がフィルムに焼き付けられ、映画とは本来「光と闇」の芸術であったことを、まざまざと思いだす。
さて、この写真はそんな映画の舞台となった牯嶺街ちかくで見つけた、ビルの上に色褪せたコカ・コーラの広告である。日本、中国、アメリカの真ん中に位置する台湾の文化はそれぞれの影響を色濃くうけているが、60年代の日本がそうであったように、台湾の若者もまた、アメリカ文化に熱狂した。
かつては夏の光のごとく輝いた国の生み出した、コカ・コーラの広告。
エルビスの Are You Lonesome Tonight 」は、こんな風につづく。
「ハニー 君を失うぐらいならば 愛してるわっていう君のウソを ぼくは喜んで聴きつづけるよ」
しかし喜んで飲みつづけるには、コカ・コーラはあまりに甘く、身体にわるい。

(な~るほど・ザ・台湾7月号『台湾の街角』))

2019年12月20日金曜日

【講演報告】 淡江大学日本語学科で台湾Y字路のお話をしました



淡江大学日本語学科の葉夌先生のクラス、ツアーガイドの授業にお招きいただきました。
金閣寺やスカイツリーなど「ザ·日本の観光地」という感じの写真が壁いっぱいに貼られた教室でいきなり「Y字路」というマニアックなしかも「ブラタモリ」とか知らない台湾の学生さんにはほぼ馴染みのない概念で、最初はみんなポカーン(・o・)って感じだったのですが、最後の方では何人かの学生さんが食いついてくれて嬉しかったです。

講演後に、淡江大学で教鞭をとっておられる友人のKanae Nakamura 中村先生から、通訳や翻訳がどんどんAIの仕事になるだろう近い将来における日本語学科の役割についてのお話を伺い、考えさせられるところも多かったです。
それから李文茹WenJu Lee 先生も合流してお茶。同い年で同じような問題意識を持った3人寄ればかしましく話題はあちこちに広がって楽しいひとときでした。帰りの淡水の夕焼けが美しかった!淡水いいなー。今度はゆっくり来たいです。

2019年12月10日火曜日

【Y字路回文】

色んな事が少し一息ついて、抜け殻のようになりながら、何をしていたかというとY字路の回文を考えていました。
という訳で3つご披露。
「わたしY字路の路地いわしたわ」
「軽いY字路のさ、ある暗渠、貯金ある朝の路地、岩いるか?」
「罪のないY字路 咲く木槿 投げ酌む草路地 祝いなの見つ」

二個目は暗渠とのハイブリッド回文になっています。貯金ある朝の路地ってなんやねん、、、とか自分つっこみしつつ。。。最後のは、ちょっと中上健次みを意識してみました!
ところで、nippon.comの書評欄で『時をかける台湾Y字路』の紹介記事を出して頂いています、ぜひお読み頂けると嬉しく思います!

【新刊紹介】右に行こうか、左に行こうか。街の迷宮への誘い:栖来ひかり著『時をかける台湾Y字路』

台中ロータリークラブで講演させて頂きました


(この記事は11月8日の講演について書いています)

我一個人的“山口縣不是山口組”運動,今天也成功了!!!(拍手~)感溫台中扶輪社,也很感謝給我那麼榮幸機會的Tim Ku 。另外,我的演講第一次有了從頭到尾用台語的翻譯,很感動了。何銘樞先生ありがとうございました!
創設65年、台中で最も歴史のある台中ロータリークラブにスピーチゲストとしてお招き頂き、台湾と山口県の繋がりについてお話しました。
山口県は台湾で知られていなさすぎる(山口組のほうが有名)のが山口本を書く動機の一つとなったのですが、社員さんの多くが山口県においでになったことや、中には明後日から錦鯉愛好家の集まりで山口市を訪れる社員さんも居られたり、宇部の彫刻ビエンナーレで展示されている彫刻作家さんが社員さんだったりと新たなご縁にびっくり。
台湾で出版した山口を紹介する本『山口,西京都的古城之美』もたくさんご購入いただけて、これを機に山口県へ新たな発見の旅にお出かけになってもらえるといいなーと思います。
台中ロータリークラブは台湾語をメインとしているだけあって、スピーチや歌われる曲も台湾語で、わたしの講演も初めてオール台湾語に訳して頂けて大変感激でした。
(注·台湾語とは中国福建地方をルーツに原住民族語や日本語などが混成された台湾ローカルの言葉で、いわゆる台湾の公用語=中国語=北京官話とは異なります。また最近は台湾で使われる公用語は台湾独自の用法も多く含まれるため、台湾華語と呼ぶようにしています)