2019年3月18日月曜日

【台湾スリバチ報告①】

ルーズベルト通りを歩いていたら気になる路地発見。入ってみると、ジメジメと苔むして濡れた暗渠サイン。
水路地図を確認するとやっぱり変な鍵型水路がここを通っている。

霧裡辟圳支線で1972年廃止、つまりこの角の盛り上がりは水路遺構! 
姉さん、上物暗渠です!!! 

路地を師大路のほうに抜けると、そこはY字路だった。
久しぶりにいい物件に出会った夜、台北の夜。


2019年3月11日月曜日

舞台『時光の手箱』~過去の手箱は、未来の手箱でもある。


一青妙さんの原作をもとにしたお芝居『時光の手箱』を観に行った。台湾の五大家族の一つである名門の「顔家」の長男だった一青姉妹のお父さん顔恵民さんと日本人妻の一青和枝さんを主人公に、一青妙さんがご両親亡き後見つけた小箱の中から、知らなかった家族の物語を見つけていく物語。
実を言えば同じテーマを原作とした映画『ママごはんまだ』では登場人物の心情や一青さんのお父さんお母さんがどういう人物だったのかが伝わって来ず消化不良気味だったのだが、今回の舞台はお父さんとお母さんの出会いから別れ、それぞれの苦悩や喜び、台湾語·日本語·中国語でのセリフから読み取れる台湾の歴史の複雑性、何より一青妙さんご自身がご両親の物語を取り戻すことによって苦しみを手放していく過程が手に取るようにわかり、とても見ごたえのあるものだった。
お母さんの和枝さんを演じる大久保麻梨子さんが素晴らしい。名門の家の長男として複雑な時代に生まれ「自分の人生なのに何一つ自分で決めることができなかった」顔恵民さんが、自分の人生で唯一決めた事が和枝さんと結婚することだったというセリフに対して、大久保さんの表現する、負けん気が強くまっすぐで愛情深いチャーミングな和枝さん像がとても説得力を持っていたように思う。
冷静に見られない表現もたくさんあった。
和枝さんと恵民さんの結婚生活は14年。わたしも来年で、台湾に来て14年目を迎える。
和枝さんが台湾に初めて来て恵民さんが迎えに来てないのではないかと思ったところはわたし自身初めて結婚のために台北に着いたときの不安と重なったし、家族の話している言葉がわからず疎外感にさいなまれた日々、誰にも悩みを話せず独り穴の中に暮らしているような感覚、子供に見られないように布団にくるまって泣きじゃくった夜、和枝さんはわたしであり、そしてわたしの知る、同じように台湾に嫁いできた多くの日本人妻の誰かであるように思えた。
また鄭有傑さん演じるお父さんの恵民さんの苦悩もまた「祖国はいつも海の向こう」と書いた劉心心さんはじめ台湾の日本語世代の方々の心情と重なるところがある。
「日本」は、「台湾」は、わたしたちにとって行くところなのか、それとも帰るところなのか?
だから、この舞台で出てくる多くの「椅子」に座っているのは、お芝居をされている俳優さんたちだけでなく、観ているわたしたちでもあるような感覚があった。その飛行機の空いた座席に座っていたのは、或いはわたしだったかもしれない、というような。
じっさい、舞台に向かい合ってる客席には今回、私だけでなく多くの国際結婚をして台湾に来た方々が座っていたと思うが、いろんな複雑な背景を持つ台湾で顔家に相応しいお嫁さんになろうと奮闘した和枝さん、また日本へ「帰りたい」と願った恵民さんの姿は客席にも照射されて、あの一つの空間にいろんな人たちの物語が渦巻いていたような気がする。
行くのか、帰るのか。過去に向かっているのか、未来に向かっているのか。
少なくとも「過去にむきあうことは未来へ進むことである」ということを、このお芝居が改めて教えてくれたように思う。

2019年2月28日木曜日

【本日は二二八記念日】


嘉義出身で二二八事件により嘉義駅前で銃殺された陳澄波の遺書を、この取材のときに陳澄波基金会で見せて頂きました。家族を気遣った丁寧な筆致と覚悟のなかに、無念さがにじみ出ていました。日本画壇のなかで苦しみ、戦争に翻弄され、二二八事件で命を落とした陳澄波の「台湾」に込めた想いが隅々に感じられる作品たちを、戦後の戒厳令下で秘かに守り通して来られた陳家の皆様に敬意を表します。

繁体字版☞https://www.nippon.com/hk/column/g00386/



2019年2月23日土曜日

都市の美しさの本来的な在り方を、溫州街のなかに見つけた。


都市の美しさの本来的な在り方を、溫州街のなかに見つけた。
城市之美,原來的樣貌。

まるで陳澄波の油絵のような風景、ここは温州街46巷にある第二霧裡薛支線疎水の名残り、台北の中でわたしが一番すきな場所のひとつ。ここから水路は三方向にわかれて、台北の町中に血管のように広がっていきました。

好像陳澄波畫裡的風景,這是溫州街46巷,第二霧裡薛支線水圳「九汴頭」的遺址,當地居民因為一起打掃整理這個水圳道,他們也更加了解這塊土地的故事,例如:水圳、台北水田的歷史、台北帝國大學教授住在這裡、戰後台灣大學教授也住在這裡。透過當地居民參與綠化,和保存文化景觀,我們可以看到歷史一層又一層的堆積。

2019年2月12日火曜日

【書籍紹介】あなたとともに知る台湾ー近現代の歴史と社会




『あなたとともに知る台湾ー近現代の歴史と社会』
(歴史総合パートナーズ6)
胎中千鶴・著/2019/清水書院

最近「台湾」について殆ど前知識のない日本の方々の前で台湾の話をする機会が立てつづけにあり、そのむつかしさと面白さについて、改めて認識した。

そんなとき、東大のトークイベントに来てくださった台湾文学研究者の赤松美和子先生が恵んでくださったのが刊行されたばかりの本書だった(美和子さんありがとう!)。
以前、台湾の葬儀や死生観について調べていた際に、本書の著者である胎中千鶴氏による『葬儀の植民地社会史ー帝国日本と台湾の<近代>』を読んで、その相対的な見方・距離の取り方の絶妙なバランス感覚にとても共感したので、日本滞在中に是非とも手に入れたいと思っていた本だったけれど、読んでみてやっぱりというか、とても行き届いた安心感があったし、こんな本を待っていたと思った。

最近は、台湾ブームもひとつのジャンルとして定着してきた感があり、ガイドブックや雑誌の特集、ネットメディアなど日本における「台湾」への入り口はどんどん多様化している。「それについてどう思うか」と聞かれることもあるけれど、入り口が増えるのはとても歓迎すべきことで、どんどん興味を持ってほしいし、興味の持ち方につれて最適な筋道をもたらしてくれる良書もどんどん出ている。たとえば、件の赤松先生が編者となった『台湾を知るための60章』は6刷にはいったというし、野嶋剛さんの『台湾とはなにか』もロングセラーとなっている。

ただ、そこにたどり着く以前に、入り口の語り方が問題になることも多い。そして入り口で間違えたままこじらせてしまったら、それを修正するのもすごく難しいことは、自分の体験としても知っている。
いちばん気になるのはテレビの取り上げ方でよくみられる「親日台湾」という言葉。それを聞くと胸に苦いものが一瞬こみあげる台湾関係者は多いと思う。
わたしもそのひとりだが、「では台湾は親日じゃないのか」と言われると「いえ、そうではなくて」と、「どこからお話したらいいのか」と手足をジタバタさせるような状態に陥ってしまう。
そんなときの救世主みたいな本が、この『あなたとともに知る台湾』だとおもう。

台湾と日本の関係を「友だち」と仮定して、
――台湾という友達がどんなプロフィールをもっているか
――なぜふたりはであったのか
――「ふたり」がこれから行く道は
と、近現代の連続性を理解することなしには語り得ない複雑なバックグラウンドを持った「台湾」を、友人として日本がどういった距離感や角度で語るか、ということを筋道立てて説明している。しかもそれがすべて、中学生が読んでも理解できるぐらいの、わかりやすい言葉で簡潔に語られているうえ、1~2時間あればよめてしまうほどの手軽さである。

本書をざっと読めば、日本人が台湾をどういうふうに語るのが好ましいか、何となくは体得できると思う。
高校生の修学旅行先としていま一番人気の台湾だけれど、その旅行前に引率の先生はじめ生徒たちが目を通すのに最適だし、台湾について伝えるメディア関係者や台湾と交流を始めたいと思っている自治体の方々にもオススメしたい。そして、手元に置いてたまに開いては、自分の身体感覚や表現方法がそれから外れてはいないかを、チェックするためのテキストとしても使える。末永く日台の交流を深めていくうえでの、日本人へのプレゼントみたいな本ではないかと思う。

https://www.amazon.co.jp/歴史総合パートナーズ6-あなたとともに知る台湾―近現代の歴史と社会-胎中-千鶴/dp/4389500929


2019年2月10日日曜日

【書籍紹介】暗渠マニアック!/吉村生×高山英男

暗渠マニアック!(柏書房/2015)
著者:吉村生×高山英男
著者のお一人、吉村生さんは拙著『台湾、Y字路さがし。』を初めて読んだときに「台湾に親戚がいる!」と思ったらしい。
過日下北沢で行われた台湾Y字路トークイベントに来てくださり初めてお目にかかった暗渠ハンター・吉村生さんと高山英男さんによる本書をご恵贈いただき、読んでみたらまるで自分のことが書いてあるみたいなのでびっくりした。暗渠とは、もともと川や水路として外から見えていたものが、そののち覆われたり埋設されたりして水の流れが外から見えなくなったもので、拙著『台湾、Y字路さがし。』では、Y字路成立の大きな要因として「水路の暗渠化」をあげている。
100メートル置きにめくるめく変化する姿を見せる「東京」の街を「水都」と仮定し、その中に潜む水の痕跡「暗渠」を追いかけた本書は、じぶんで言うのもおこがましいのだけれども、台湾Y字路本と「双生児」のような雰囲気を持っている。
まえがきからして、高山さんの「ドブ水」の匂いを「馥郁たる」と形容してしまうセンス、まるで遊園地のジェットコースターに乗っているような初めての暗渠体験、生さんの「桃園川」を擬人化し妹のように身近に思う心のうごきかたなどは手に取るように共感できるし、元々川の流れだったことに気づいたことから「恋に落ちた」ようになったファースト暗渠との出会いなんて、わたしの同安街のファーストY字路との出会いと凄まじいシンクロを見せている。
わたしのY字路本が出たのが2017年だから、2015年に出版された本書は兄/姉のような存在なのだが、まるで生まれ落ちた時に離れ離れになった肉親と、異国で再会したような、ドラマティックな気分で熟読してしまった。
本書では、Y字路と同じく街のレイヤーを読み解き、大きな空間感覚を持つことで普段見慣れた街の風景が変わると解く、そんな部分では拙著『台湾Y字路さがし。』と志を共にしている。
だが、そこからにさらに「マニアック!」と大きく題された本書だけに、拙著の更に上層高くにめぐらされたマニア路地を突き進み後ろを振り返らない。
とくに高山さんの研究成果である、東京都内の川の暗渠・開渠の比率とか、その源流が生活排水なのか「湧き水」によるものかを水質調査によってグラフ化したものとか、もうわたしなどには思いもよらない深化の形に思わず「すげー」と感嘆の声をあげてしまった。
また、「暗渠サイン」と名付けられた、川の名残や暗渠を示す現象(車止めのある遊歩道や、コケむした路地など)のほか、「銭湯」「クリーニング店」「米屋」「材木店」などの存在が暗渠濃度を示すという慧眼にも、おもわず膝を打った。わたしのY字路本は、横尾さんの「Y字路」という概念におもねるところが大きく、イメージ先行というか、そこまで精密に探索することを放棄して不親切なところがあると自分では思っている。
それに対し、本書『暗渠マニアック!』のすごいところは、「暗渠」について包み隠さず、これを読めば何の疑問も残らないように懇切丁寧、ホスピタリティー溢れる設計がされているところだ。
次に東京へ行ったらぜひ訪れたいと思ったのが、生さんが挙げられた、かつて吉原や須崎パラダイスなどの遊郭・赤線を囲んだ「おはぐろどぶ」の暗渠化した境界。
また、本書の東京以外の各地の暗渠をめぐるコラムでは、最後に台北暗渠と「下水湯」も登場する。
すべての道は暗渠に通じ、すべての暗渠は海へと通じる。人の暮らすところに水があり、都市は水路と共に発達してきたから、いわば世界のどんな街に行けども暗渠やY字路を発見しその後ろに埋められた街の履歴を愉しむことができる。
いくつかの約束事やサインを知っておけば、あとは心は自由に暗渠の流れに任せて遊ばせる、そんな風に世界の街を歩くのに欠かす事のできない本書および、著者のお二人と出会うことができて、とっても幸せにおもっている。

2019年2月1日金曜日

日本の民芸運動に影響を与えた台湾竹工芸




NIPPON.COM』にて、台湾竹工芸の歴史について書きました。涼しさを感じられる竹材が豊富な台湾では、昔からありとあらゆるものを竹で作ってきた伝統があり、それは日本で柳宗悦らが提唱した「民藝運動」にも影響を与えました。

日本の民芸運動に影響を与えた台湾竹工芸

https://www.nippon.com/ja/japan-topics/g00637/

☞繁体字版


日臺共同編織的臺灣竹工藝之歷史軌跡

 https://www.nippon.com/hk/column/g00637/