2015年12月10日木曜日

【中国映画】追婚日記~ オシャレでゴージャスな夢をまとって来るべきものとは。

               
             

この映画を観たすぐ直後に、興味ぶかい記事を読んだ。
英・ファイナンシャルタイムスの記者が台北で書いたのを、日本経済新聞が日本語訳して掲載したものだ。

1980年代に大きく発展し、台湾当局が技術流出を防ぐために中国大陸からの投資を禁止してきた台湾の半導体業界内部から、シトロニクスやメディアテクなどの大手企業を中心として、中国大陸からの投資や合併を積極的に受け入れる動きが広がっている、との記事だった。
老闆(ラオバン/経営者の意)達はいう。

「お金はお金、そうでしょう?」
「中国と組めば、西側の同業者とも競争できて市場が広がる」
「何があろうと最後には中国人は自前で出来る、その前にこちらから合流したほうがいい」

現在、台湾の貿易の30%は中国大陸に依存しており、仕事や観光で人の行き来も年々活発となっている。しかも、公用語はおなじ「中国語(北京官話)」だ。

「いつか統一する日が来る、その時に台湾がいかに良い条件・立場に立てるか、そこが問題」というようなことを、アノ李登輝さんが言っていたのを昔どこかで読んだことがある。そのときに
「李登輝さんでさえそう言うのなら、いつか避けては通れない道なのだ」というのは、ここ台湾で家庭を持ったひとりとして覚悟した。ただ、

いつ?
どうやって?

というのはよくわからなかった。
まわりの台湾人に聞いたところ、「まあ30~35年はかかるだろう」というのが平均的な意見だった。
でも今回の中国映画「追婚日記」(あえて中国映画という)を観ていて、おもった。
もっともっと早いこともあり得るのかもなあ、って。

今までも、中国資本がはいって中国を舞台にした映画はたくさん作られていると思う。
ここ最近でも舒淇(スー・チー)をヒロインにした「剩者為王」(未見)だって、上海を舞台にしてるし。それ以外にも、台湾スタッフや俳優が中国資本の映画で活躍して来たのは、これまでも沢山あっただろう(それ自体はモチロン喜ばしいことだと思う)。
しかし昨年、台湾映画の上映に関する新しい法律が中国で出来た。中国のマーケットを無視出来ない台湾映画としては、それを呑むしかお金を集める方法がないので、いま多くのエンターテイメント的な台湾映画はその条件下で作られている。
その法律とは、メインキャストの幾人か(二人以上?)を中国人俳優にしなければ中国で上映できない、更に中国企業も投資できないという厳しいものなんだそうだ。

それでも重要なのは、一応はどれも台湾・中国の合作だったということである。

だから(全部チェックしてないので絶対とは言えないまでも)この「追婚日記」は初めての、ほぼオールメイン台湾キャスト&スタッフなのに、オール中国資本の映画といえるのじゃないだろうか(前例があったらすみません、指摘してください)。

さて、映画の内容。

舞台は上海。
キャリア・ウーマンで33歳のララ(林依晨/リン・イーチェン)とカメラマンの王偉(周渝民/ヴィック・チョウ)は同棲して5年になるカップルだが、なかなか結婚まで話が進まない。
そんなとき、煮え切らない相方にイライラが募るララに最高のキャリア・アップ&結婚のチャンスが降ってくる。
出向先のPR会社で、取引先のイケメン若社長(陳柏霖/チェン・ボーリン)から壁ドン&片膝ついてのプロポーズを受けて、王偉との三角関係に揺れるララ。
サクセスとセレブな未来。恋人とは。幸せとは何なのか。

といった、ストーリー的には簡単な話なのだが、この映画が下敷きにしているのは「プラダを着た悪魔」。
とにかくスタイリッシュでオシャレなセレブなリン・イーチェンや周りの女の子達の姿が映し出される。
加えてリン・イーチェンの元上司は白人、そして新上司はニューヨーク帰りだからグローバル!しかも、三角関係になるチェン・ボーリンや仔仔が、とにかく理解力があって優しいくてご飯だって作ってくれるし「現実にこんなオトコおるかい!」と突っ込みたくなるようなファンタジックな男性像なのである。チェン・ボーリンに比べたら役柄的にはスペックが低い設定の仔仔だって、ニューヨークでカメラを学んだって設定なんだから云わば富二代(お坊ちゃん)である。

台北でバスに乗ってると見かける、ジャージ着て長い髪ぱらりと垂らした勉強ばっかりしてる女の子たち、これ観たら思うだろうな。20代やアラサーの女子たちだって思うだろうな。ファッション雑誌「ELLE TAIWAN」のFBページだって、毎日この「追婚日記」が女の子たちにとって、どんなにオシャレで素敵な映画かって宣伝してる。バスの上にも広告が貼られて毎日走ってる。

「台湾の身近なタレントたちが中国で活躍してる」
「上海でキャリア積んで働きたい」
「こんなオシャレな生活して恋愛したい」
「中国人の男の子と恋愛したい」

そう云うふうに思ったら、映画の中にいっぱいキーワードは散りばめられている。
例えば洋服のオンラインショップが映画内で紹介されている。
オシャレな服はここで買おう。台湾からでも注文出来るし(実際、台湾で売られているのはダサい服が多い)、タオバオをはじめ中国で楽しく消費をする門戸は既に大いに開かれている。
そして実際に、台湾の女の子のなかで中国人男性との恋愛は流行っている。
理由は
「台湾人男性みたいに粘着質でなく」
「一人っ子政策でオトコが余っているので、女の子にすごくマメで家事全般得意」
「お金を持っている」ということみたいだ。
まさにこの映画の中で描かれている理想的な中国人男性そのものである。

これらのものを手に入れたいと大陸に渡った女の子達は、果たして思うだろうか?
「台湾は台湾、中国は中国。」って。


昨年、太陽花学生運動があれだけ盛り上がったのには理由がある。
もう、両岸統一は見えるところまで来ているから、あれだけの学生たちが危機感を感じて立ち上がったのだ。でも、危機感を感じたのは目に見える違和感に刺激されて恐怖が沸き起こったから。
これからも、そんな刺激的で表面的な事件が起こって皆の注目を引きつけることは何度もあるだろう。でもそれ以外は、見えない方法で少しずつ、でも確実に、台湾の人々の常識や心のなかに浸透していくのだと思う、例えばこの映画みたいな方法で。
そして今の20代が40代の国家を支える働き盛りになっている頃にはどうだろう?
と、エンドロールに次々と上ってくる無数の中国のネット企業やメディア企業を見ながら、さむ~い気分で映画館をでた。

最後にひとこと、もしこの映画を観るならば、それ以外に最低3本は「台湾映画」を観て欲しい、もし出来るだけ長く「台湾は台湾」であって欲しいと思うならば。
一般消費者にとって、消費とは日々の投票行為である。

これに尽きる、気しかしない。


      








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