2016年3月17日木曜日

【台湾映画】那時此刻~The moment


「アートは時代のタイムカプセルだ」
と、いみじくも言ったのは、たしか都築恭一さんだったと思う(都築さんにどういう肩書きを付けたらいいかわからない。写真家とも編集者とも、一つの肩書におさまり切れない人だ)。
そういう意味で、アートには時代の空気がそのまま真空パックにされて閉じ込められている。
時を経て見返しても、その時代を確かに反映していると同時に、普遍的な「なにか」を提示してくれたり、違う角度からの眺めを提供してくれる。
よいアート作品はそういうものだろうと思う。
自分がどうして映画が好きなのか考えてみたとき、その「真空パック」がより端的に表れているところにある気がした。

実は、初めて「台湾映画」を意識して観たのは結構最近のことで、作品は「悲情城市」だった。
まだ結婚する前で、東京に住んで居たときに今の夫が近所の「日の丸ビデオ」で借りてきてくれた。
恥ずかしながら、それまで台湾について丸きり何も知らなかった。夫は「これを観たら、わたしのお父さんやお母さんの気持ちがわかるよ」といった。
後で知ったことだけど、ト二―・レオンは台湾語も日本語も喋ることが出来なかったので、聞こえず喋れない人物設定になったらしい。
それが見事に、押し黙って運命に翻弄されてきた台湾の人々の気持ちを表しているようで心がふるえた。
偶然の必然。そういうものを、日本映画界の人たちは「映画の神様が降りてくる」って呼んでたな、そういえば。

そんな「映画の神様」が降りてきていた時期の台湾映画を観ていくうちに、台湾映画が好きになった。映画を観ることで知れることが沢山あったし、台湾を身近に感じるようになった。
いま台湾に来てからちょうど10年目になるけれど、10年という期間の割には、台湾社会のこれまでについて外国人なりに知ってるほうではないかと思う。
そういうものは殆んど、映画を観て学んだ。


そして昨日、「那時此刻~The moment」を観に行った。
金馬奬の歩みを描いたドキュメンタリー映画だ。
「金馬」と「金の馬(golden horse)」が、実は元々なにも関係ないこと、そして授賞式が何故10月末に取り行われてきたかという、ちょっとした映画ファンでもあんまり知らなかった事実がまず明かされ(わたしもコレを観て初めて知ったのだが、ウィキペディアをよく読むとちゃんと書いてある)、それから、台湾語全盛時代を経て國語(北京官話)映画時代の到来、抗日映画時代から台湾ニューウェーブと、台湾の複雑な世情を反映しながら作られてきた、この50年あまりの流れが紹介される。
ここで明らかにされるのは、台湾映画の歴史において多くの時代に「映画の神様」は降りてきていなかったということだ。そんなとき金馬奬に輝いたのは、香港映画であり、シンガポール映画であり、中国映画だった。
アンディ・ラウ(劉徳華)の言葉がひどく印象的だった。
「何十年もこの金馬に来ているから、台湾映画が輝きを失っていた時期を良く知ってる。それが、今度は香港にまわってきた、これからは僕たちが頑張る番だ」
こんな内容だったと思う。

たしかに、今の香港の状況をおもえば、本当に映画と社会が切っても切り離せないものというのがよくわかる。近年の台湾本土派映画(國片)の盛り上がりをうけて、去年は台湾映画ファンにとっては、台湾映画が金馬奬で沢山賞を取った嬉しい年となった。その前年が中国映画ばかりだっただけに、嬉しさもひとしおで。
金馬の女神のようなシルビア・チャン(張艾嘉)の笑顔も一際輝いていた。


さて、今年。
台湾に初めて女性の総統が生まれる。
彼女の進む道はきっとイバラの道には違いない。
けれど、それがどんな風にレンズに映りこむのか。ドキドキするけれど、たのしみでもある。
とっても。
あのテーマソングを聞くと胸が高鳴る。
このタイミングで、このドキュメンタリーが観られたことに感謝したい。


我一直支持台湾電影。
台湾加油、加油台湾電影!


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