2017年11月26日日曜日

【第54回金馬奨雑感】

トロフィーも金色の馬なので単なる賞の名前と思っているひとが多い(私も以前ずっとそう思っていた)のだけれど、そもそも「金馬奨」は設立当時に中国との両岸冷戦下で最前線だった「金門」「馬祖」の一文字ずつを取って、中国に影響されず、かつ台湾語全盛の台湾映画界の中で「国語」(北京官話/台湾華語)で作る映画人を応援する賞として設立され、また蒋介石の誕生日祝いを兼ねて毎年この時期に開催されるようになった。
後に「北京官話」のみならず広東語も加わり、香港映画全盛期(台湾映画不毛期)には香港映画で盛り上がった金馬。
また両岸関係の変化に伴って中国映画にも門戸が開かれ、2011年には「日本語」「セデック語」が主な言語の「セデック・バレ」が多くの賞を受賞するなど受賞作品の多様化が進むなか、近年は巨大な中国資本・マーケットへの距離の取り方と台湾映画界の独立性、および政治的な不公平感がぬぐいきれず、受賞作品の選定のされ方について色んな問題提議がされており、そういう意味で金馬奨を考える事はまさに「台湾とはなにか(by・野嶋剛氏)」を考えることそのもので、それが金馬奨を観る面白さともいえる。
去年は多くの賞を中国・香港の作品が獲り、台湾映画ファンとしてはやけ酒を煽りたくなるような結果でしたが、今年は台湾映画のレベルが全体的に高かったので、かなり楽しみにしていた第54回金馬奨。
その予想を裏切らず、鐘孟宏プロデュース「大仏プラス」、「GF*BF」の楊雅喆監督「血観音」などのド本土系が各賞をかっさらい感動でボロ泣き。特に、日本でも話題となった「父の初七日」を撮った王育麟監督の「阿莉芙」で、トランスセクシャルの「シェリー」を演じた名脇役俳優・陳竹昇(大仏プラスではメインキャスト)が助演男優賞を受賞したときは声を上げて座席から飛び上がるほど嬉しかった!そして林秀美はじめ多くの映画人がその陳竹昇の受賞に涙しているのにも、またもらい泣き。そんな現場に幸運にも居合わせられ、ほんと有難く思いました。
映画音楽賞では、台湾客家ロックの第一人者・林生祥(交工楽隊)の「大仏プラス」の主題歌が受賞したのにも、また感じるものがあり。
この篇でも書いたように、
http://www.nippon.com/ja/column/g00440/
これからの台湾エンタメの鍵を握るのは「本土的多様化」というのはかなりいい線行ってるかと思います。そして今年の金馬の結果もその傾向に呼応するように(審査員の呉念真の影響も大きいのかも知れない)、より台湾本土指向に対して積極的に評価する方向に向いている気がしました。作品賞を受賞した楊雅喆監督が掲げた「没有人是局外人」の旗もよかったし、受賞者が「あえて」台湾語・広東語を喋る場面も多くみられたのも印象的。
本来、台湾を全面に押し出すキャラだった陳玉勲監督や魏徳聖監督の今年の作品(「健忘村」「52HRZ」)の興行成績が振るわなかったのは、その辺り(観客の期待する本土テイストに欠ける)に原因があると思っているのだけど、昨日公開されたばかりの楊雅喆監督「血観音」(今年度の作品賞はじめ主演女優賞・助演女優賞)を近いうちに観に行って、いろいろまた考えてみたいと思います。台湾にお住まいの方は是非とも「血観音」観に行ってみてください、とっても面白そうなので。
それにしても台湾映画って、ほんっとーにいいものですね。それでは、さよなら、さよなら、さよなら。

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