2018年3月27日火曜日

【受講備忘録~90年代を描く台湾映画で懐古されるジェンダー保守日本】

昨日は日本台湾学会第80回台北定例研究会にて、台湾文学研究者の赤松美和子さんの講演を聴きに伺いました。赤松さんは、台湾における戦後の台湾文学環境から、現在の「作家ー読み手のインタラクティブな創造空間」に到るまでを分析したご著書『台湾文学と文学キャンプ』の台湾版を、今年1月に出版されました(『臺灣文學與文藝営』)。どうやって現在の「サロン」的読書空間の盛り上がりが台湾で形成されるに至ったかというのを日本人視点で細かく論じた、台湾の独立書店に興味がある方には是非ともおススメしたい本です。
講演タイトルは『90年代を描く台湾映画で懐古されるジェンダー保守日本』。
「90年代」「台湾映画」「懐古」「ジェンダー保守」。
もう、一つ一つのワードがいちいち個人的にツボなのですが、講演内容もまさにストライクゾーンど真ん中。
『藍色夏恋』『九月に降る雪』『あの頃、君を追いかけた』『私の少女時代』と、90年代を舞台とする現代台湾の青春映画をめぐって、その中で日本のサブカルチャーがどういった風に台湾映画の中で表象として表れているかというのを示しながら、90年代に日本から台湾に渡ったサブカル文化の描かれ方が「ジェンダー・ステロタイプ」なことに着目し、封建的なヘテロセクシュアル観念に通じる表現に関してはカッコ書きの「日本」の中に収束され「簡略化」(というか、あんまり考えられていない)されて棚上げされているのではないか。
またそれは、同性婚合法や女性社会進出の定着などジェンダー的に進歩的な台湾社会の指向性と矛盾しているのではないか、という鋭いご指摘でした。
このテーマについては、わたしもニッポンドットコムで同じような趣旨の記事を書いた際に、特に台湾の方から、反発や考えすぎ、さらに「台湾にそれを植え付けた自分(日本人女性)としての反省はないのか」などのご意見を頂き、正直かなり落ち込みました。
でも、若い台湾人の方(男性ふくめ)には割とポジティブな意見として受け入れられたこと、また日本人の中国語翻訳などをしてる方のブログで↓
「こうしたステロタイプなイメージに乗っかる形で、現在台湾で活躍中の日本人女優が男性用避妊具を手に微笑むといった構図の広告を打つのは、日本人女性に対する一面的な見方の助長という点でも、性差やジェンダーの意味や実相の多様性が再認識されつつある現代の視点からも、かなり危ういのではないか」
http://qianchong.hatenablog.com/entry/2018/01/24/100709

といった風にきちんと読み取って下さっている方もいることに励まされたのですが、今回の研究会に参加して、同じような問題意識を持っている研究者の方がいることを本当にうれしく思いました。
台湾コンドーム広告についての記事は、アラビア語にも翻訳されたようです。

女性の立場が極端に低いアラブ諸国ですが、それだけに民主やジェンダーに関する映像表現は、ものすごく細分化・意識化されて表現されていますし、それだけに、翻訳して頂けたのかなと思っています。
イラン映画における映像の洗練についての筆者の感想↓ 
【イラン映画】Jafar Panahi's Taxi/計程人生/タクシー ~薔薇と罪は地続きにある
https://taipeimonogatari.blogspot.tw/2016/07/taxi.html

わたしが台湾社会を眺めたり考えたりしてきているなかで、「台湾って日本の鏡だなあ」って色んな意味で思うことが多いのですが(逆もまたしかり)、この「台湾での日本ジェンダーステロタイプ問題」も、例えば上述した「台湾にそれを植え付けた自分(日本人女性)としての反省はないのか」というのが、日本での痴漢やレイプ被害者に対するセカンド被害(被害にあった人自身に問題があるという指摘)にすごく似ているように思います。
台湾におけるこうした「日本人女性棚上げ問題」から、世界的に起こっている「MeToo」問題が日本では全然盛り上がっていかない理由(被害者自身が反省したり反省を求められたりする構造)も読み取っていけるのではないか、そんな風にも感じた、とても興味深い講演でした。

0 件のコメント:

コメントを投稿